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2010年12月 4日 (土)

映画:おまえ うまそうだな(※若干ネタバレ注意)

新聞の論評で興味をひいたので、絵本をもとにしたアニメ映画「おまえ うまそうだな」を観てきました。よい映画でした。

私は新聞を読んだ時点で絵本の内容を知らず、単純に面白そうだなと思ったのですが、ツレは絵本を知っていて、今時の、それなりに人気シリーズだとか(絵本は後日読みました)。そんなわけで、ある意味先入観なしに観ることができたのですが、それはそれでよいかなと思います。

(以降、ネタバレ注意)

絵本では肉食恐竜(ティラノサウルス)のハートが卵を拾うところから始まりますが、映画ではその前に因縁話的なエピソードが付加されます。ハート自身が、草食恐竜(マイアサウラかな)のメスに卵を拾われ、(その草食恐竜部族の反対を押し切って)育てられるというものです。
ハートは草食恐竜の兄弟とともに群れから離れて育てられますが、やがて肉食の本能に目覚め、肉食恐竜一族との出会いとを経て自分の出自を悟ります。そして、母、兄の元から逃げ出して肉を食らう生活を始めます……ただし、肉食の群れには混ざらずに。やがて、草食恐竜の卵(おそらくアンキロサウルス)を拾ったハートは、絵本とほぼ同じ展開で「うまそう」を育ててゆくことになります。

アンビバレントな生い立ちとアウトローとしての宿命を背負ったことで、この映画は絵本の世界から独立した作品として成立することができました。群れから離れた母によって育てられ、成長後は肉食の群れからは自身が仲間から離れて暮らす設定とすることで、ストーリーがとても自然に受け入れられます。うまい。

途中、ハート自身の鍛錬やうまそうを鍛えるシーンでは、前脚の貧弱なハートがカポエラ使い的な動きを見せたり、ベタにコミカルなギャグシーンが挟まったり、現代的なアニメ映画の楽しさも楽しめました。特訓シーンなどを観ている間は、漠然と「なんか、昔観た『チリンの鈴』みたいな話(世代がバレますね)になってゆくのかなあ」といった予想を立てていたのですが、物語が進むにつれて、当たり前ですが全然違う作品であることを実感してゆきます。

なによりも印象的だったのは、草原の中をうまそうが草を食いつつ進んでゆく表現です。
お蚕さんが桑の葉をひたすら食ってゆくように、うまそうは草原に食い跡の”道”を作りながら進んでゆきます。そして、その道には、一定間隔で点々とうんこが残されてゆきます。やがて草原のキャンバスに、壮大な点線の線画が出来上がってゆきます。
作中では、草食に育てられたハートによる肉食のジレンマがたびたび語られ、それはそれで生物が他者の命を搾取しながら生きてゆかねばならない事の切なさを十分に訴えてくるのですが、うまそうによるうんこの線画は、ハートの対極にあって、生きることの切なさを十二分に表現している気がします。

映画の後半は、絵本にはない内容~ハートの出自について貴種流離譚的なエピソードが入ったり、故郷が危機に瀕したりといったスリリングな物語で構成されています。(絵本を知っている人ならおわかりの通り、原作に忠実なだけでは90分の話は作れない。)
私の中でのピークは……子供時代のハートに「お前はオレと同じ肉食だ」と教える肉食がいるのですが、やがて成長したハートとそいつは因縁の戦いに身を投じます。ハートが勝ちます。そしてそいつは負けた腹いせに、横にいるうまそうに対して「こいつ(ハート)はお前の父親なんかじゃないんだぞ」とバラすわけですが、(子供店長演ずる)うまそうの返答に、私の脳天はぐらり。
あとはもう、ラストまでのハラハラドキドキも予定調和的な大団円も、(嫌いではありませんが、私にとってはもはや)幕下げまでのヨセみたいなものでした。(特に、最後の最後の「卵」はちょっと……)

大人も楽しめる映画でした。でも、見に行った時、自分達以外は全員、親子づれでした。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

はじめましてJHといいます。私も嫌いなわけではないのですが、この映画で気になった所がありました。

実際の内容面ですが、監督の意向なのか、脚本の意向なのか、上からの意向なのかはわかりませんが結果的に見るとアンバランスだと思いました。

捕食シーンとか戦闘シーンとかその他の描写は規制だらけの近頃の子供向けにしては頑張った方かもしれません。自然界の厳しさライトとハートが生まれる前から出てたと思います(卵がライトとハートの以外全滅したり)。

このように結構ハードな描写があったにも関わらず予定調和のラストは中途半端だと思いました。

やはり(近頃の)子供向け映画では限界があったのかもしれませんね。

投稿: JH | 2012年5月16日 (水) 05時41分

コメントありがとうございます。
ラストが予定調和的大団円であったことは、きっと賛否両論でしょうね。絵本のラストもそういうテイストではないし、JHさんは、この物語にはシビアな結末だって似合うとお考えなのですね。
私は個人的には嫌ではないかも。(仕事で生徒向けに演劇の台本を書くこともあるのですが、私自身、迷った挙げ句にハッピーエンド的な終わりになることも多いですし)

投稿: zaco | 2012年5月17日 (木) 00時19分

言い忘れてしまいました。絵本の作者は映画スタッフに「絵本とは違うものを作ってください」とお願いしたそうです。

失礼しました

投稿: | 2012年5月17日 (木) 01時06分

補足してすみません。

おまうま映画ですが

映画版は原作者の人が「絵本とは違うのを」と頼んだと知りましけど気になりました。
http://www.netdetirasi.co.jp/cinema/interview/059.php

http://mi-te.jp/contents/cafe/1-9-742/

映画は全体的に子供向けに向いてない又はそれに詳しくないメインスタッフに無理矢理「子供向けの物」を作らせたら大体あんな感じになるんのでは?って思いました。

絵柄については「あまり子供向け作品に詳しくない人が考えた」か「子供向けならこんな感じで良いかな?」感が強くて残念たと思いました。子供向けに詳しい人なら、子供向けなりに魅せるデザインにしそうです。アンパンマンとかは上手く魅せてると思います。アンパンマンなんかもアニメは原作絵本と絵柄は違いますがあっちのアニメはシンプル、動かしさ、より幼児受けを重視していながらも魅せるような感じが出てます。
おまうま映画のキャラデザ・総作画の人は後にマジックツリーハウスもやってますが、そちらでは良い感じなんですけどね。

内容については、誰向けなのか良くわかりませんでした。子供向けメインとして見るには過激ですし、中高生~大人向けメインとして見るには子供っぽいと思いました。捕食とか戦闘とかその他の描写は規制多い最近(ここ2,3年)の子供向けとしては頑張ったかと思います。自然界の厳しさもライトとハートが生まれる前から出てたと思います(卵がライトとハートの以外全滅)。世界観や設定や戦闘等は結構厳しい感じです。しかし、それ以外がよくある子供向けって感じがしたので何だか中途半端かな?と思いました。 (自分が完全子供向け、完全中高生以上向けとはっきり分かれてる物でないとすっきりしないタイプかもしれませんが)

スタッフについては、脚本家はわかりませんが監督は過去の履歴を見ると最近はあまり子供向けらしい仕事はしておらず、「おまえうまそうだな」が初監督?みたいですね。その辺も、「あまり子供向けに詳しくないのかな?」「誰向けか中途半端」と思わされる部分かもしれません。

ギャグとシリアスの気合が違ってて、シリアスシーンの方が上手くてギャップすら感じました。推測ですが「描きたい物」(中高生~大人っぽさ)と「描くべき物」(子供っぽさ)で混乱したんじゃないかとすら思いました。

この特徴は2011年の忍たま映画でも感じられました(監督がおまうま映画と同じ藤森さん)。

藤森さんはたまにTVシリーズの忍たまに演出、もしくは絵コンテとして来る事があるのですが最近はあまり子供向けらしくない回を担当してます。17期で演出として来た時は普段の10分アニメの単発話とは思えないアクションシーンも目立ちました。19期で絵コンテとして来た時は、普段の10分アニメの単発話とは異質の全体的に静かな雰囲気でした。

投稿: JH | 2012年6月 9日 (土) 23時07分

補足コメントありがとうございます。
原作ものからの二次創作、特に映像作品については監督やその他制作陣の個性発揮をどの程度まで認めるか、それは常に難しい問題ですね。
原作を冒涜しているとしか思えないものあり、これは「別の作品」として楽しむべきだな・その限りにおいてよい作品だという場合あり、なんだ原作を単になぞったダイジェスト版かという誹りを受けるものあり……。

投稿: zaco | 2012年6月10日 (日) 00時30分

原作物は確かに色々ありますよね。

個人的にもシリアス演出の方にグッと来た事から、「作り手は描きたい物と描くべき物で混乱したのでは?」と思ってしまいまいした。
”描きたい物”は「中高生~大人向けのバトルや弱肉強食や捕食や死亡?キャラ描写等」で、”描くべき物”は「映画は映画で原作絵本とはまた違う無難な親子向けの有り触れたお涙頂戴部分や楽しい活劇」を指しています。映画の曲でもそれが表れてるのかもしれません。描きたい物は弱肉強食を意識したカッコイイ挿入曲(「heartbeat」)と何だか怖い童謡な挿入曲(「ハートの子守唄」)、描くべき物は優しさを意識した主題歌(「君といる時間の中で」)に表れるという感じに。
因みに「heartbeat」と「ハートの子守唄」の作詞はおまえうまそうだな製作委員会です。アニメ映画版の絵本に載っています(表紙はアニメ映画のDVDBDとパッケージ?と同じ)。
本格的に弱肉強食とか食物連鎖を突き詰めたら(今の)ファミリー向けでは限界があると思います。因みに絵本と映画では死亡?キャラが違います。
絵本では主人公の友人のエラスモサウルスが死亡?します(「きみはほんとうにステキだね」参照)。映画ではモブ(冒頭の潰された卵、中盤?の三本ツノとそれに倒された恐竜、タマゴ山が噴火した後に倒れてる恐竜)と「ゴンザ」(主人公の因縁のライバル?噛ませ?)という肉食恐竜が死亡?します。

子供向けとか大人向けにも色々あると思います。なのでまとめて言う事は出来ません。
子供向けが得意と言っても「単純、簡単なもの、荒唐無稽が得意」な人と「子供向けだからこその真剣なものが得意」な人がいます。
大人向けが得意といっても「萌え、エロ、腐向けが得意」な人と「高度でマニアックなものが得意」な人がいます。

今の子供・親子向けと数年前~昔の親子向けとは違うと思います。あの平成ライダーだって今の方が明るいですしね。売上もより良いのかもしれないので、「子供・親子向けは明るい方が需要あるのかな?」と思います。それに数年前までなら朝か夕方に放送するようなものでも、今では深夜になってもおかしくないです。

投稿: 弦 | 2012年6月25日 (月) 21時00分

コメントありがとうございます。
「描きたいもの」と「描くべきもの」の問題も難しいことのひとつですね。
特に商業作品においてはなおさらオトナの事情的なものが絡みましょうが、その問題をひとまずさしおいても、実は難しい問題だと思います。
演劇の台本を書いていて思うのは、「主題(描きたいもの)の展開だけに100%筆を使うと、その作品は面白くなくなる」ということです。どこかに、アソビ(面白いとか笑えるという意味ではありません。車のハンドル等のアソビの方)というかノイズのようなもの(←という言われ方をしたことがあります実際、講評で)がないと、その作品はただ苦しいか、つまらないだけのものになると。それを避けるために描き込む「べき」要素が実は必要で、実際、それがある作品には深みと本当の意味でのリアリティが出るような気がします。

投稿: zaco | 2012年7月 1日 (日) 11時54分

映画版「おまえうまそうだな」ですが、
まずはあのお母さんが最悪だと思いました。「肉を食わなければ行きていけない肉食恐竜」を強情に草食恐竜として育ててたのを見たときは目を疑いました。これが「大切な我が子」に対してする行為?
肉食恐竜相手には、赤い実ばかり与えてないで、こっそり肉を与える等の努力くらいして欲しかったですね。体質や食べる物が違う物を同じように育てるってのは、人間で言えば「健常者と障害者を同列に育てる」「食べ物アレルギーのある子とそうでない子を同列に育てる」ようなものでしょう。「大切な我が子ならその体質にあった食べ物もちゃんと与えろや!」と思いました。
そんなお母さんの可笑しな育て方をされたせいで幼少の頃のハートはライトにすぐ腕相撲で負けたり、骨と皮の痩せっぽっちでした。
そして、終盤でバクーが「骨と皮の痩せっぽっちだった」「肉食は肉を食わなければ生きていけん」と言いました。

それにも拘らず、あのお母さんは「肉食恐竜のハートに対して可笑しな育て方をした事」について何とも思いませんでしたよね。
「食べられても良い」とは言いましたが、その事と「肉食恐竜を草食恐竜として育てるかどうか」はまた別問題でしょう。
そんな育て方した時点で問題なんですから。

あとスタッフについても言いたい事があります。
「弱肉強食とか喰う喰われるの問題は最後までキッチリと扱ってください」「幼児向けだからこんなもんって舐めてるのか?」
「幼児向けでどうしても縛りがあって無理なら、制約がそれよりも少ない大人向けのアニメか映画で頑張って成果を上げてください」って言いたくなりました。

弱肉強食や喰う喰われるの問題をキッチリと真摯に扱った作品って実は少ないのでしょうか?

投稿: デ出 | 2012年7月15日 (日) 01時31分

コメントありがとうございます。
「お母さん」の育児については、個人的には(草食いのなし得る)ギリギリの選択ということなのかな、などと比較的許容できる気持ちで見ていました。なるほど、いろいろな意見があるのですね。
動物ものは、擬人化された時点で寓話となるわけで、つまりそこに描かれるのは「人間」です。食う食われるはその時点で(カンニバリズムの様相を帯び)タブーとなるようです。実写映画ですが、「ホワイトプラネット」などは、捕食の姿を容赦なく描きますよね。うまそうだなは、もしかしたらそのあたりに混濁があるのかもしれません。

投稿: zaco | 2012年7月19日 (木) 00時05分

この映画は最近でもどこかで上映会をやったそうです。先月の9月でもやったそうです。

はっきり言ってこの映画はプロデューサーの「とにかく女の人が泣ける話」という要望や企画や宣伝の「心温まる」を強調が無茶だと思いました。大人の事情かどうかは知りませんが、企画サイドと作り手サイドの思いが少々ズレてるのでは?と思いました。

仮にも恐竜世界で捕食者と非捕食者の問題も出てくる映画なのに「女の人が泣ける」「心温まる」路線ばかり押し付けられても、作るスタッフも困るのでは?と思いました(作品にある要素の1つとしては良いのですが)。子供だって場合によってはシビアだし媚びられるのを嫌になる事はあると思います。子供向けの作品や書籍でも子供にわかるように伝えた、ハードな話のやつもありますし。

監督としては去年のアニメージュの8月号のこの人に話を聞きたいで、「捕食する側とされる側のテーマの話だったから、やっぱりそこから逃げて作る事は出来ない」「自然描写も含めて、ちょっとリアルに世界観を作らなくてはいけない」「人の生き死についてはあまり嘘をついちゃいけないと思う」 と寧ろ客観的とも言える発言もしていました。生き死に関しては、忍たまの映画についても「そこのギリギリのところをどこかなどこかなと探りながら作ったという部分はありますよね」と言っていました。
またお母さん恐竜がまた子供を生んだ所についても「お母さんにも普通の女性としての性がある」「生々しい感じが出るといいなとは思っていました。」とも言っていました。

インタビューはURL先の「今更だけどおまえうまそうだな」というタイトルのコメントの部分の画像です。2011年アニメージュ8月号はAMAZONで中古販売しているかもしれません。いずれも子供向けという媒体上、表現規制の問題には勝てなかったのでしょうがその枠の中で表現しようとしたのかもしれません。

プロデューサーから「とにかく女の人が泣ける話を」と言われたとの事ですが、それについても「人が死ぬか別れるかと言う小手先のテクニックで泣かせたくない」って言ってるんであって”可哀想な話”が嫌だと言ったわけではありません。実際、キャラが死ぬシーンで泣かせるより虚しさとか冷徹さを表してる漫画アニメドラマはあります。この映画の絡んできたライバルポジションキャラが倒れる所も泣ける演出というより、無常さを感じられる演出だったと思います。(悪い意味ではなく)

「女の人が泣ける」というのは死の描写についても綺麗事のイメージがありましたので。本当にハードなものは死の描写についても「泣ける~」ってよりも冷徹さを表す事が多いと思います。昭和時代にあったやなせたかしさんの「チリンの鈴」も死が出てきますが、泣かせる為のシーンではなく厳しさや虚しさを表したものでした。

投稿: 絶太 | 2012年10月 8日 (月) 19時13分

追記

中には企画段階では「それはちょっと無理があるんじゃないか?」と言いたくなるのもありますからね。

おまえうまそうだなは恐竜世界を舞台にしたものですが、そもそもその漫画アニメを「心温まる」「女の人が泣ける」路線を全面に押し出そうとした映画の企画の時点でミスがあったと思います。そして、無理してそういう意図を受け入れて作るとなると、どうしてもこのような出来になってしまうのも仕方ないのかなと思います。

投稿: 絶太 | 2012年10月10日 (水) 12時38分

この映画はマイナーだけど見た人にとってはジワジワくるかもしれませんね。コメントが来るのもそうかもしれません。最近で上映会を小さな所(上映会、おまえうまそうだなとネットで検索してみると・・・)でやったのもそれが原因かもしれませんね。

個人的には、この映画の肉を食べるシーンは本当に難しかったんだろうな、と思いました。そのままリアルにやっても、嫌悪感感じて客が見るのをやめてしまったら、意味ないですからねえ。厳しさを伝えようにもただ「怖い」だけに思われたら、失敗ですよね。この映画の媒体からして、ターゲット層は小さなお子様の場合は親の目も気にしなければなりませんので、噛み砕いた描写じゃないと無理なのでしょうね。映画だと書籍系よりそういう戦略が強調されるイメージですね。それに最近はレンタルビデオという商業展開もあるので、客が見る回数が多い方が都合良いのは確かです。レンタルも直接金だすのは親ですからその親にも気を使わなければなりませんよね。

投稿: kabosu | 2012年10月23日 (火) 22時36分

初めまして

おまえうまそうだな映画って宮西達也さんの絵本の何冊かの映画化ですね、一応。
それでその映画を見たのですね。
長文な上に制作スタッフや原作者の裏話も踏まえた意見なので不愉快に感じたら申し訳ありません。
裏話なんて客にはどうでも良い事かもしれませんが、この映画のように「おいおいそれはないだろ」と感じるのもあります。
上層部のコンセプトみたいなもので幾らなんでも受け狙いばかり重視するのはかえって逆効果じゃないのでしょうか?と思いました

■映画版のコンセプト等
そこで、映画版は、作者の方が企画会議にも参加して「原作と違うもの」と意見を言った事から、
割と最初から原作とは違う物になる事が決まってたようですね。宮西達也さんのインタビュー
ttp://www.netdetirasi.co.jp/cinema/interview/059.php
ttp://mi-te.jp/contents/cafe/1-9-742/
少なくともセールス側にとっては、これはありがたいと思ったかもしれません。
「原作と違うもの」って頼まれた以上、原作よりもキャッチーさを優先するという余地も出来たのですから。

■スタッフの考え
でも実際にスタッフにとっては、上層部の考えはそれほど本意じゃなかったってのもあながち間違ってないのかもしれません。
ttp://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493のインタビュー(アニメージュ2011年8月号にあった)でスタッフの発言が少なからずありますがこれについて触れた意見を言おうと思います。
確かに今の所、映画スタッフの発言ではそういうあれだけプッシュされてた
「可愛い」「ハートフル」といった部分にあまり触れてないのも確かです。
そればかりか、「捕食者と非捕食者の関係で~」とか「自然描写を~」とか
「”泣ける”という題目だけで1本の映画を作るのに抵抗あった」とかと言ってて
上層部の意図はあまり本意じゃなかったかもしれませんねえ。

■作中の台詞の一部とお母さんへの評価
作中でも、マイアサウラのお母さんについて「どうするつもりだったんだ」「こいつ(ハート)を一生苦しめる気か」と言ってた
肉食恐竜のボスがいました。マイアサウラのお母さんが育てなければ今はいなかったという事も認めていましたが、
ああいう詰問をさせたので気になりました。
この肉食恐竜のボスの怒り台詞もスタッフの抵抗にすら感じたのですが考えすぎでしょうかね?
そして、スタッフ自身もこのマイアサウラのお母さんについて「浮世離れしたところがある」と評していました。
このマイアサウラのお母さんへの発言は上にあるインタビューの画像に載っています。

■映画の絵柄
映画の絵柄に関してもスタッフの反応で何か含みを感じましたね。
一見、映画のデザインについて褒めてるように見えますがマイアサウラのデザイン以外は特に触れていませんからね。
マイアサウラのお母さんのデザインについては褒めてても、他のデザインについては特に褒めてる様子は見掛けませんでした。
(ただし、マイアサウラのデザインも絵本と違うのでその意味では不満に思う人もいるかと思いますが)
アニメージュ2011年8月号は自分の手元にもあるのですがその褒めてた発言を引用します。
「あんなシンプルなキャラクターなのに、眉毛もないのに、ここまで表情を出せるのかと。
あの辺はやっぱり柳田さんの力のおかげです。お母さんがあんなに生々しくて色っぽいのも、柳田義明さんの力ですよね。
お母さんの色っぽさは想定外だったんですが。」

マイアサウラのお母さんのデザイン以外での発言だと「丸っこいキャラだけどカッコイイアクションをやる」的な部分くらいでしょうか。
これだけだと他のデザインについては褒めてるのかどうかわかりません。
そもそも、他キャラのデザインについてもどこまでがスタッフの発案なのかどうかわかりません。
誰かから「丸っこいデザインにでもしてくれ」と頼まれたからなのか、そうでないのか謎ですからね。

■原作者の思い
原作者の宮西達也さんについてこういう話もあったらしいです。
ttp://mcgeorge.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/10-344a.html
・「大人が読んで楽しいから子供にも面白い」
『おまえ うまそうだな』は7年前に発表。弱肉強食の厳しい自然界で本来、相いれない“親子”の関係を描きながら、
「種族の違い、敵対する者同士の壁は越えられるのか」と問いかける。
小学校低学年までが対象年齢だが、硬派なテーマが受け、大人のファンも数多く獲得している。
「最初から子供向けにと考えて描いていません。大人が読んで楽しいから子供も面白いと思えるのです」

■もしもの話
そして、今となっては野暮な話ですが、もしスタッフも映画版の上層部の意図を無視して、
ある程度好き勝手やっていたらまた内容が違ってたかもしれません。
出来はどうなってたかは知りませんが、実際よりもスタッフの意図が強調される内容になってたかもしれません。
裏話を読む限り、手放しに好き勝手する余地があったわけでもないんだな、と思いましたから。
映画版は作品紹介やコンセプトと、映画スタッフのインタビュー画像を見比べて見ると、
いかに映画の売り手だか企画は本当に重要な物は二の次で
とにかく「可愛さ」「ハートフルさ」ばかりに拘ってるかのように見えました。
その上、プロデューサー側からの「とにかく女の人が泣ける物を作ってくれ」という要望に
最終的には「泣けるという部分を苦労していれつつ」と言ってるので、少なくとも好き勝手やったわけでもないと思います。

■とにかく女の人が泣けるという要望
この映画は漫画アニメファンが好むような絵柄じゃないし、
漫画アニメゲームにあるようなイケメンキャラの話でもないし、ライダーみたにイケメン俳優も出ないし、
映画版あらしよるにみたいに細かい絵柄のヤギと狼の友情物でもないのですから、
これで「女の人が泣ける」っていうのは女の人をも馬鹿にしてるのかと思いました。
ただ可愛いキャラでほんわかストーリーでも作れば、女の人が喜ぶとでも思ってたのでしょうか?って言いたくなりましたね。

投稿: ナット | 2013年1月15日 (火) 15時58分

自分もこの映画には言いたいことがあります。

企画、キャラデザ、キャスティング、起用、マイアサウラの母親に
ついての意見なので長くなります。
出来れば返答をくださるとうれしいです。

■企画

絵本や童話が人気だからって何でも映画化しようなんて
企画段階で無理があったようにも思えます。
2005年に上映された「あらしのよるに」なんかは
1冊ごとの完結でなく数巻も話が続いたので良かったと思います。
しかも「あらしのよるに」は原作者も脚本に参加出来てたので幸運だったでしょう。

それに比べて「おまえうまそうだな」は1冊ごとの完結の絵本です。
元々繋がってない複数の話をまとめるというだけでも無理があるのに、与えられた尺に合わせて伸ばしても原作ファンは難色示すでしょう。
しかも、こちらは「あらしのよるに」と違って原作者は脚本に参加してません。
ホンの最低限の事しか注文せず、絵本と違うものを頼んでいました。
http://mi-te.jp/contents/cafe/1-9-742/のインタビューで原作と違う物を頼んだ件に触れています。


推測かつ乱暴 な言い方でになりますが、おそらく企画側は「人気絵本のネームバリュー、親子の絆という部分に目を付けた」という、浅はかな考えだったんじゃないかと思います。

情報段階から「安易に絵本のネームバリュー、親子愛に目を付けてそう」と思ってました。映画版の絵柄もああいう路線にしろってスタッフ側に命令したのかもしれませんね。

まあスタッフ達もスタッフ達で、企画段階にあったかどうか怪しいアクションだか活劇もやりたいと思ってたそうですが。
(ただ、アクションだか活劇もやりたい要望は、絵本のネームバリューや親子愛を利用したいか否かとは、あまり関係なさそうなのでまた別の話だと思います。)

■キャラデザ方面

ガラッと変わる例もありますがこの映画に関しては、
「本当はもっと違うデザインでやろうと思ってたけどポケモンみたいにしろと頼まれて仕方なくやった」という可能性も必ずしも否定しきれない。

「丸っこいキャラだけど格好良いアクションをやる」的な発言はhttp://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493を参照。
アニメージュ2011年8月号の、この人に話を聞きたい。P86~89の中の一部です。見れなかったすみません

こういった意見しか知らないのですが、これだけだと本当に監督(下手すりゃキャラデザイナーも)の意向であのデザインになったのかどうかわかりません。

「丸っこいキャラだけど格好良いアクションをやる」的な発言は、こんなキャラになったのは仕方ないがが、それでもアクションをやってやる」という意地なのかもしれませんし。

と思いました。

■キャスティング

キャスティングも子供店長だの、原田知世だのを起用すれば、子連れ層狙えるだろうという浅はかな考えだったのではないでしょうか?
ただ、キャスティングはスポンサー、プロデューサー、監督、音響監督の誰が決めたのかは分からない状態です。
原田知世については、監督曰く「自前にイメージしてなかった」そうですが。
まあアニメ映画にありがちな芸能人のキャスティングは
宣伝費とかの事情があるのかもしれませんがハッキリした事情は謎です。

■起用理由

「大山ドラえもん映画ワンニャンの映画のカーチェイスパートの部分を担当して評価高いらしく、しかも当の本人もアクション物もやりたいと言ったらしいスタッフ」を、

何故、映画版おまえうまそうだなのような当たり障りのないほのぼのアニメ映画の監督に起用したのは一体何が理由だったのかと疑問があります。初めての映画監督作品でこれですか、と思いました。

アクション云々はhttp://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493でも述べてました。
(アニメージュ2011年8月号の、この人に話を聞きたい。P86~89の中の一部です。見れなかったすみません)

自分は、アニメ業界の事は知りませんが

もし「アクション関係で評価されてる&本人もそういう事をやりたいと言った」って事が本当ならば、
何故当たり障りのないほのぼのアニメ映画の監督にしたのか不明なんです。


■マイアサウラの母親
この母親には 遠回しにスタッフ陣も呆れてたのでしょうか?
監督の人が「肉食だとわかっていながら平気で育てちゃう浮世離れした」と言い方もしてました。
http://photozou.jp/photo/photo_only/286

投稿: レゴン | 2014年7月10日 (木) 05時19分

コメントありがとうございます。私に何を返答することが求められているのかおぼつかないのですが、寄せてくださったコメントを拝読して感じたことを書きます。ズレてたらすみません。
作品論の中に「作り手の事情」論を入れることは、両刃の剣の側面があります。
文学作品でいうと「作家論」に相当しましょうか。「あの小説は、作者が個人的に○○であった時期のものなので、実はあの場面の意味は△△って読めるんだ(読むべきなんだ)……」みたいな話を聞くと、じゃあその事情を知らない者はその作品を正しく評価できないのか、作家が自身の周辺事情まで察してその作を読んでほしいなら、逆に必要な資料を添付して世に問え、といいたくなります。それをしない以上は、作家は、(読者が手にした)文章そのものだけで勝負すべきなんだと思うのです。
何が言いたいかといえば、”鑑賞者”として「うまそうだな」を評価するのに、作品そのもの以外の(例えば作品の周辺にまつわる)様々な情報は果たしてどのくらい必要なのかということです。(”研究者”は別です、研究するのであれば。)難しい問題だと思います。鑑賞者としての私自身の評価は、ブログの本文に書かせていただいた通りです。

投稿: zaco | 2014年7月11日 (金) 01時16分

zacoさんへ、この映画は最初に見た時から
「中途半端」「ツギハギ感が強い」と思ってました。

後に、たまたま資料みたいのを見たら余計そういう風に思ったという感じです。


おそらく映画「おまえうまそうだな」は、
スポンサー側の意向(ハートフルな家族ドラマ、お涙頂戴)と、
スタッフ側の意向(バトル要素、主人公の描写、自然描写)が中途半端な物になったのか、とも邪推してしまいます。

スポンサー側の意向と、スタッフ側の意向を、同時に満たして八方丸く収まるようにと考えたけどツギハギになったみたいな感じです。

そこら辺が主人公、母親、映画オリジナルキャラ、オリジナル展開、世界観、絵柄があるのかもしれません。
そこでスポンサー側、スタッフ側絡みで意見したいと思います。


■【映画「おまえうまそうだな」スポンサー&スタッフ】について

主人公、母親、映画オリジナルキャラ、オリジナル展開、世界観、絵柄への意見を言います。


◆主人公関係

スポンサー側的には、マイアサウラの母親や、
赤ちゃん恐竜ウマソウをプッシュしたかったのかもしれません。
宣伝とか作品解説を見てると、
母親やウマソウをプッシュしたような感じです。
キャストクレジットも母親やウマソウの方が、
主人公のハートより上です。


しかし、スタッフ側である監督的には、
ハートの生き方等を描こうと思ったそうです。
実際、描写はハートの自己発見やら自己完結が目立ちました。

ハートの描写を中心にしながら、
戦うライバルとの描写等を入れたようです。
バトル物が好きだとも言っていました。

戦う描写についての発言も、
上述のインタビューの画像に載っています。
また、上述の一部アニメーターのツイッターにも載っています。


◆母親関係

ここら辺もスポンサー側的には、
プッシュしたかったんじゃないかと思います。
宣伝とかの扱いを見てるとそんな感じです。

母性として共感出来ない所も
ここで大体決まってたのかもしれません。
とにかく理屈じゃない母性を意識したかったのかもしれません。

しかし、描写は母の心境が現れずな感じでした。
スタッフ側である監督的には「肉食だとわかっていながら
平気で育てちゃう浮世離れした」というキャラだそうです。

そういう気持ちだから再解釈する気になれなかったのかもしれません。
そんなキャラの気持ちなんて分かりたくなかったのかもしれません。
遠回しな苦笑い、失笑の対象で。

浮世離れ発言も、上述のインタビューの画像に載っています。


◆映画オリジナルキャラ関係

オリジナルキャラの存在自体は、
どの段階で決まってたのか分かりません。

スポンサー側的には、オリジナルキャラを出すにしても、
とにかくハートフルな家族ドラマ関係の物を
意識したかったのかもしれません。
宣伝とかの扱いとか見てると、
そういう路線で売りたかったように見えますから。

しかし、「ハートと戦う」扱いのキャラは
スタッフ側である監督の意向みたいです。
戦うライバル云々言ってましたから。

戦うライバルの存在への発言も、
上述のインタビューの画像に載っています。


◆映画オリジナル展開関係

これも幾つかありますが、

スポンサー側的には、オリジナル展開やるにしても、
とにかくハートフルな家族ドラマ関係の物を
意識したかったのかもしれません。
宣伝とかの扱いとか見てると、
そういう路線で売りたかったように見えますから。

しかし、ハートが戦うシーンや、母親がまた子供産んだシーンはスタッフ側である監督の意向みたいです。

戦うシーンや、母親がまた子供を産んでたシーンの発言も、
上述のインタビューの画像に載っています。


◆世界観関係

スポンサー側的には、オリジナル展開をやるにしても、
とにかくハートフルな家族ドラマ関係の物を
意識したかったのかもしれません。
宣伝とかの扱いとか見てると、
そういう路線で売りたかったように見えますから。

しかし、スタッフ側である監督的は
「自然描写を含めてちょっとリアルに世界観を
作らなければならないという判断はありました」だそうです。

実際、映画の中には卵泥棒、恐竜の群れ、白亜紀末期、
被子植物、鳥類、原始的リスのような哺乳類が出てきました。
主人公含む肉食恐竜がエサを狩るシーンも出てきました。

世界観の発言も、上述のインタビューの画像に載っています。

◆絵柄関係

何度も言っていますが、
スポンサー側の意向でああいう路線になったかもしれません。
「こういう絵にしてください」「丸っこい絵にしてください」と。

しかしスタッフ側である監督的には
「こういう絵を命令されたのは不本意だけどアクションをやるぞ」
という事なのかもしれません。

「こんなキャラクターだけどアクションをやるぞ」発言も、
上述のインタビューの画像に載っています。

投稿: レゴン | 2014年7月11日 (金) 15時09分

コメントありがとうございます。
母親に関する「浮世離れ」という表現は、否定的な意味合いの時もあれば、実はわりと肯定的なニュアンスでの使われ方もあるのではないかと思います。
物語上、ハートに「出自と成育歴の両方において他のキャラとは異なる性質を持たせる必要があった」という点において、草食いに育てられたという設定は秀逸であると認めざるを得ません。この結果、ハートは(神話的)英雄ポジションを獲得し、物語終盤の肉食いが草食いを救うという(ともすると無理筋とも思える)展開を支え切るわけです。私の拙い見立てからすると、それを実現するためには母親のあの性格設定は必然的な要請だと理解しました。

投稿: zaco | 2014年7月12日 (土) 02時57分

そういう基本設定となる部分とかは
スポンサー側の意向なのかもしれません


この映画見た時から中途半端に感じたので
「複数の側面の要望を同時に満たしてムリヤリ八方丸く収まめたのか」と思ってました。


そこで
http://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493
この資料アニメージュ2011年8月号のインタビューの一部を見た時に、

「スポンサー側の意向(ハートフルな家族物、お涙頂戴)と、
スタッフ側の意向(バトル要素、主人公の描写、自然描写)を無理矢理両立させようとしたのも原因なのかな?」と思いました。

両方を収めようとして全体的にチグハグ、ツギハギになったのではないかと。


上の方からは「とにかく女の人が泣ける映画」を求めていたけど
監督側にとってはバトル要素、主人公の描写、自然描写がやりたかったり。


ちなみに映画「おまえうまそうだな」は他の映画と比べてもスタッフの発言が少ない印象なので、
アニメージュ2011年8月号「この人に話を聞きたい」での監督人のコメントや、一部アニメーターのツイッターしか知りません。
設定資料集とかファンブックとかも出ていませんので。
オーディコメンタリーもありません。

アニメージュ2011年8月号のインタビューの画像は
http://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493に
一部乗っています。

一部アニメーターのツイッターは
http://togetter.com/li/27269で知りました。

投稿: レゴン | 2014年7月12日 (土) 05時27分

コメントありがとうございます。
おっしゃりたいことは十分にわかりました。

投稿: zaco | 2014年7月13日 (日) 02時06分

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